2020年4月15日水曜日

アナログモデムの通信音について

アナログモデムと呼ばれる、電話回線を使ってデータ通信をするための装置があります(多分、今でもFaxモデムとして売ってます)。インターネット接続手段としても利用され、アナログモデムでプロバイダーへ接続する方式をダイヤルアップ接続と呼びます。
まだ光回線やADSLがない時代に最盛期を迎えた方式で、現代の日本ではダイヤルアップ接続によるインターネット接続はほとんど役目を終えています。ですが、アナログモデム自体は「ファクシミリ(Fax)」という形でまだまだ活躍しています。Fax電話機にはアナログモデムが内蔵されていて、画像データを音声周波数帯域に変調して送り合っています。

アナログモデムは独特の通信音、接続音で知られています。「ピーヒョロロー」と表現される音で、当時からパソコンを利用していた方や、家族がパソコンを使っていたという方ならば聞いたことがあるかもしれません。今ではむしろ、リアルタイムでアナログモデムの通信音を聞いたことが無い方のほうが多数派かもしれません。

アナログモデムの通信音を可視化して詳しく解説した動画を何本か見つけました。
Modemowe połączenia dial-up - migawka elektroda.pl | YouTube
Sound of the dialup modem explained | YouTube

1つ目の動画が分かりやすくてオススメです。ポーランド語ですが英語字幕があり、平易な英文なので比較的読みやすいと思います。
2つ目の動画は図が精細に描かれていますが、情報量が多すぎて読みにくいかも。

これらの動画を見て頂くと分かるのですが、あの通信音は接続にあたっての各種設定や下準備を行うという、いわゆるネゴシエーションを行っている音なんですね。
何らかの問題で接続がうまくいかなかったとき、ユーザーが「どこで止まっちゃったんだろう」と調べやすくするために音を出しているんだと思います。
ネゴシエーションが終了して実際に通信を開始すると、うるさい通信音はミュートされてしまいます。あくまでもミュートされるだけなので、実際の電話回線には常に音が流れ続けています。

■ネゴシエーションでは何をしているのか
アナログモデムの規格は高速化のための拡張を繰り返されたため様々な通信モードがあり、接続相手が対応する規格や電話回線の質によってそれらを使い分けます。
そのため、まずは低速かつ確実な通信モードで最小限の接続を確立し、それを起点として「より高速に通信できないか、より確実性の高い通信ができないか」をお互いに探り合います。
高速な通信モードでの通信が確立した場合には、通信を安定させるための音響設定などを調整します。低速な通信モードではそれが必要ないため省略されます。

以下は、先ほど紹介したポーランド語の動画を参考に、ネゴシエーションの手順をまとめたものです。理解するためには電話回線の基礎知識が必要になります。

・交換機から発信モデムへダイヤルトーンの送出
・発信モデムから交換機へ電話番号の送信
・(交換機から相手モデムを呼び出す)
・(相手モデムが応答し、回線接続が完了)
・相手モデムはV.8 bisで接続を試行
・発信モデムはFSK 300bpsで応答、ネゴシエーションのためV.8への切り替えを要求
・相手モデムはV.8への切り替えを了解
・発信モデムはV.8 bisでの接続が終了することを確認
・相手モデムは送信チャンネルにおけるエコーキャンセラーを無効化
・発信モデムは対応する接続機能の一覧をFSK 300bpsで送信
・相手モデムは対応する接続機能の一覧をFSK 300bpsで送信
・互いのモデムが対応する接続機能について、DPSK 600bpsでより詳細に通信
・電話回線の質を測定するために広帯域音声信号を送信
・受信した信号の結果についてDPSK 600bpsで通信
・最終段階で、イコライザーとエコーキャンセラーを調整
・ネゴシエーションが完了し、接続が確立されるとモデムのスピーカーはミュートされる

■なぜ通信が「音」として聞こえるのか
通信に使われる電気信号は交流信号です。
電話回線は、人間が発する音声を、電磁誘導などを利用して交流の電気信号に変換して送ります。実際に回線を流れるのは、音声通話に必要かつ合理的な周波数帯域である300Hz~3.4kHzの信号です。
アナログモデムは、電話回線に流すことのできる、この300Hz~3.4kHzの周波数帯域を使い、コンピューターにおける通信に適したデジタル変調方式を使ってデータをやり取りします。
このアナログモデムの変調信号は人間の可聴周波数帯域に含まれているので、アナログモデムが送り合う電気信号をスピーカーなどで空気の振動に変換すると、いわゆる「ピーヒョロロー」という音として聞こえるわけです。

ちなみに、この「通信音」なんですが、ビットレートによって人間が体感できる音が変わってきます。
ビットレートが低い場合は「ピロピロピロ」といった音がします。まだゆっくりした音です
1200bpsくらいになると、「ガラガラガラガラ」という非常に速いペースの音が聞こえます。
9600bpsやそれよりさらに上のビットレートでは「ジャーッ」というホワイトノイズのような音になります。

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